| グレンタール家。知ってる人間は少ないものの、何代か続いている、トロウでは中流階級に位置している家だ。 |
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グレンタール家には3人の男の子と2人の女の子がいた。 そして、知っている人は知っている、ある秘密があった。 “グレンタール家の3男は甥”―。そう、本来はグレンタール家当主、コーネリアスの甥にあたるのである。 |
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彼の名はフェイン。コーネリアスの兄とその妻の息子であった。 家業に興味のない兄に対して、家業に興味のある弟。 兄夫婦は冒険の傍ら、グレンタール家の護衛の仕事もしていた。 ある時、彼らは弟、コーネリアスを狙ったある暗殺者によって殺害された。貴族間にありがちな陰謀であった。 |
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独り立ちするにはまだ幼かったフェイン。コーネリアスは彼を引き取った。 せめてものお詫び、そして恩返しに、と。 状況を理解していた利発な少年は、周りが望む人間を演じ続ける。 そして、生まれる前の出来事で何も知らない妹は無邪気に彼を慕う。 |
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それから数年。 彼も立派な青年として仕事を任されるようになっていた。さらに、彼の年齢では不思議ではない、お見合いの話も持ち上がった。 だが―。 |
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誰も気付かなかった。否、気付けずにいた。 兄を慕う妹が兄妹以上の感情を持っていたことに。 そして、事件は起きた―。 |
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『家と家との繋がり』という意識の強い貴族。 フェインの実力を恐れた貴族たちは、こぞってフェインに自分の娘と一緒にさせようとした。 殆どは却下されていたのだが、ある話が通り、見合いの席が設けられることに。 そのことに末の妹は激怒。彼女は見合いの席に乗り込み、相手の女性を持参のナイフで切りつける。そして、こう叫んだ。 |
| 「フェイン兄様は私のものなのよ!私と一緒になるの。そうよ、誰にも渡しはしないのですからね!」 |
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この事件以来、彼の周囲では見る目が変わった。うわさ話も絶えなかった。 彼自身も変わった。 夜遊びと称して頻繁に冒険者の宿(銀の月灯り亭)に出入りするようになったのだ。 周りの冒険者との話に花を咲かせ、自分が貴族であることを忘れようとした。 彼女を恐れて、男も女も、必要時以外誰も近づかないようになったからだ。 両親ですら、末の妹の言動に恐れ始め、彼と妹を一緒にしようと言い出した。 |
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妹としか見れない彼と、一人の男性としか見えない妹。 兄や姉にも相談した。 兄2人は両親の決定に従うべきだと説いた。もちろん、周りもだ。 だが、誰よりも強い姉だけは違った。 「無理に自分を殺して妹と一緒になる必要はない」 |
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これ以上ここにいれば誰に火の粉がかかるわからない。 彼は全てを捨てる決心をした。 自分さえ、この家にいなければいい。妹も諦めがつくだろう・・・。 手始めに、冒険者となることを選んだ。 あそこならば、誰も『貴族としてのフェイン』を知らない。ただの『フェイン』となることができる。そう思ったからだ。 予想通り、自分を深く探る人はいなかった。種族すらバラバラなのだから。言葉を濁せば、それだけで相手は自分に対して興味をなくしてくれる―。その空気が彼には心地よいものだった。 そして、彼はまた今日も酒を飲む。周りの空気を肴にして。 |